地積規模の大きな宅地とは? あなたの税負担が少なくなるかも⁉
広大な地積の宅地を所有している被相続人の方が亡くなった場合には、土地の評価額が高くなってしまうため相続人の方々の税負担は大きくなる傾向があります。
しかし当該土地が地積規模の大きな宅地に該当する場合には評価減を適用することが可能です。被相続人の方から500㎡以上の土地を相続により取得した相続人の方はこの記事を読んで頂けたら幸いです。
目次
1. 制度趣旨
地積が大きな土地は相続で取得した後に戸建住宅用地として分割分譲する場合には下記のような減価が生じます。
⑴分割分譲することで戸建住宅用地として有効に利用できる部分の面積が減少することに伴う、「潰れ地(道路・公園緑地・外周部の利用されていない土地のことを指します。)」の負担による減価
⑵住宅として利用するために必要な上下水道等の供給施設の工事費用や、開設した道路等の公共公益的施設の整備費用等の負担による減価
⑶開発分譲業者の事業収益や事業リスク等の負担による減価
これらの減価があるため単純に【路線価×地積】で地積規模の大きな宅地を相続税評価額として算定してしまうと実際よりも高額になり望ましくないため、当該土地の評価額の算定する上で減価の事実を反映するために地積規模の大きな宅地の評価が創設されました。
※「地積規模の大きな宅地の評価」の創設に伴い、「広大地の評価」は廃止されました。平成30年1月1日以後に生じる相続等により取得した土地等の評価では「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されます。
2. 適用要件
地積規模の大きな宅地の評価を適用するためには、下記の要件を満たす必要があります。路線価地域は⑴~⑸、倍率地域は⑴~⑹に該当すれば適用できます。
※国税庁ホームページに「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシートがあるためご利用ください。
⑴面積要件
三大都市圏に所在する場合については500㎡以上、三大都市圏以外の地域に所在する場合については1,000㎡以上の地積を有する土地であること。
三大都市圏は首都圏、近畿圏、中部圏が該当しますが、そこにある全ての土地が該当する訳では無いため、三大都市圏に所在するか否かを評価対象地ごとに調べる必要があります。「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシートの2面に該当する区域が記載されていますので、ご確認ください。
【例】例えば東京都でしたら、下記に所在する土地が首都圏に含まれます。
特別区・武蔵野市・八王子市、立川市、三鷹市・青海市・府中市・昭島市・調布市・町田市・小金井市・小平市・日野市・東村山市・国分寺市・国立市・福生市・狛江市・東大和市・清瀬市・東久留米市・武蔵村山市・多摩市・稲城市・羽村市・あきる野市・西東京市・瑞穂町・日の出町の全域
⑵地区区分の要件
評価対象地が【普通商業・併用住宅地区】又は【普通住宅地区】のいずれかに所在する宅地であること。なお、倍率地域にある場合には普通住宅地区内に所在するものとされるため、この要件は満たすことになります。
【調べ方】国税庁のホームページにある路線価で把握できます。【〇:普通商業・併用住宅地区】、【無印:普通住宅地区】になります。ビル街地区・高度商業地区・繁華街地区・中小工場地区・大工場地区に該当した場合には地積規模の大きな宅地の評価は適用できないこととなります。
⑶都市計画の要件①
評価対象地が市街化調整区域以外の区域に所在する宅地であること。
※市街化調整区域にあっても宅地分譲に係る開発行為ができる区域にある場合にはこの要件を満たすことになります。当該土地が所在している市役所に確認したら教えてもらえます。
⑷都市計画の要件②
評価対象地が、都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域以外の地域に所在する宅地であること。
※第1種 低層住居専用地域、第2種 低層住居専用地域、第1種 中高層住居専用地域、第2種 中高層住居専用地域、第1種 住居地域、第2種 住居地域、準 住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域に該当した場合にはこの要件を満たすことになります。
⑸指定容積率の要件
評価対象地が、東京都の特別区内に所在する宅地については容積率が300%未満の地域、その他については容積率が400%未満の地域に所在すること。
※容積率は指定容積率(都市計画において定められています。)により判定します。
⑹大規模工場用地に非該当
評価対象地が大規模工場用地に該当しない土地であること。
※大規模工場用地とは、工場・研究開発施設等の敷地の用に供されている宅地及びこれらの宅地に隣接する駐車場・福利厚生施設の用に供されている一団の工場用地で、地積が5万㎡以上のものを言います。
3. 規模格差補正率
下記の算式により算定した率になります。この規模格差補正率を土地の価額に乗じて計算した金額によって評価します。
規模格差補正率:(Ⓐ×Ⓑ+Ⓒ)÷Ⓐ×0.8
※小数点以下第2位未満を切り捨てます。
※Ⓐ:地積規模の大きな宅地の地積
※Ⓑ及びⒸは地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じて下記の表から求めます。
①三大都市圏に所在する宅地
地積 | Ⓑ | Ⓒ |
500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.9 | 75 |
3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
5,000㎡以上 | 0.8 | 475 |
➁三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | Ⓑ | Ⓒ |
1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.9 | 100 |
3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
5,000㎡以上 | 0.8 | 500 |
4. 具体例
【事例】東京都新宿区にある土地(1,200㎡)で下記を満たすとします。
・路線価地域 ・普通住宅地区 ・市街化区域 ・第1種 住居地域 ・指定容積率:200%
⇒上記2の要件を全て満たすため、地積規模の大きな宅地の対象地に該当します。(Ⓐ=1,200㎡、Ⓑ=0.9、Ⓒ=75)
{(1,200㎡×0.9+75)÷1,200㎡}×0.8=0.77 ⇒23%OFFとなる!
地積規模の大きな宅地の評価を適用するか否かで土地の評価額が大きく変わってしまうため、無駄な税金を支払わないためにも申告前に確認してください。
5. 倍率地域に所在する宅地
倍率方式によって評価する地域に所在する宅地で上記2の適用要件を満たすものについては、地積規模の大きな宅地の評価を適用することができます。その際当該土地の価額は次の⑴と⑵のいずれか低い方の価額で評価されます。
⑴固定資産税評価額×倍率
①固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税 納税通知書に記載している固定資産税評価額を確認します。
➁国税庁のホームページにある倍率表から倍率を確認し①に乗じます。
⑵地積規模の大きな宅地の評価を適用した評価額
①評価対象となる宅地の近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1㎡当たりの価額を当該土地が所在している市役所に確認します。
➁国税庁のホームページにある倍率表から倍率を確認し①に乗じます。
③普通住宅地区における奥行価格補正率及び各種画地補正率を➁に乗じて計算します(路線価方式による評価と同様です)。
④上記3で算定した規模格差補正率を③に乗じます。
⑤規模格差補正率を乗じた後の1㎡当たりの価額である④の金額に、評価対象となる宅地の地積を乗じて計算します。
6. まとめ
地積規模の大きな宅地の評価は要件が複雑で該当するか否かを判断することは難しいと思われますが、上記4で説明した通り地積規模の大きな宅地に該当すると大幅な評価減が見込まれますので必ず検討すべき特例になります。
土地評価には地積規模の大きな宅地の評価以外にも様々な評価減が見込まれる特例があります。これらの特例をきちんと適用するか否かで納付すべき納税額が変わってしまいます。特例は知っているか否かが重要ですので、今回の地積規模の大きな宅地の評価のような適用すると有利になる特例をこれからもブログで多く説明して参ります。興味をもってくださった方は他のブログもお読み頂けたら幸いです。
税理士事務所スプリングではお客様の税負担が可能な限り少なるように様々な特例を適用した上で相続税申告書を税務署へ提出しています。ご相談等がございましたら、お気軽にご連絡ください。