遺留分とは⁉ 相続の時によく問題となる遺留分割合を解説致します!

遺言書

遺言書が残されている場合、被相続人の意思が尊重され遺産は原則 遺言書の通りに分割されます。しかし中には「Aに全ての遺産を譲る」といったように他の相続人にとって不利益な事態となってしまう内容の遺言書もあります。その場合に排除された相続人にとって重要となるのは遺留分です。

今から遺言書を作ろうと考えている方や、遺産分割協議をしている相続人の方々は、被相続人の意思によっても奪うことができない相続分である遺留分も考慮に入れて頂きたくこの記事を記載致しました。ご一読頂けたら幸いです。

1. 遺留分の算定の基礎となる財産

相続開始日の積極財産+贈与財産の価額-債務の全額

贈与財産は下記の財産が含まれます。

⑴相続人に対する相続開始前10年分の特別受益
 ①相続人が婚姻や養子縁組のために受けた贈与
 ➁生計の資本等に該当する贈与

⇒自宅を建築するための土地や建築資金の贈与、子どもが独立起業する際の独立資金の贈与、極めて多額の生活費名目の贈与が該当します。

※遺留分を侵害するという意図がある場合には、10年より前に相続人が受けた特別受益も含まれます。

⑵相続人以外に対する相続開始日前1年間にした贈与

※当事者双方が遺留分権利者を害することを知って行った贈与に関しては、1年経ったとしても遺留分の算定の基礎となる財産に含まれます。

2. 遺留分割合

被相続人の遺産総額を1億円として、遺留分割合と遺留分の計算方法をケース別に説明致します。遺留分割合は法定相続分の1/2になっていることが多いですが、一定の場合には異なりますのでご注意ください。

⑴配偶者と子どもが相続人の場合

対象者 遺留分
配偶者 1/2×1/2
子ども 1/2×1/2(人数按分有り)


【具体例】配偶者及び子ども(長男、長女)の場合
①配偶者:100,000,000円×1/2×1/2₌25,000,000円
②長男、長女:100,000,000円×1/2×1/2×1/2₌12,500,000円

⑵配偶者のみが相続人の場合

対象者 遺留分
配偶者 1/2


【具体例】配偶者のみの場合
100,000,000円×1/2₌50,000,000円

⑶子どものみが相続人の場合

対象者 遺留分
子ども 1/2(人数按分有り)


【具体例】子ども(長男、長女)のみの場合
100,000,000円×1/2×1/2₌25,000,000円(各々)

⑷配偶者及び直系尊属が相続人の場合

対象者 遺留分
配偶者 2/3×1/2
直系尊属 1/3×1/2(人数按分有り)


【具体例】配偶者及び直系尊属(祖父、祖母)の場合
①配偶者:100,000,000円×2/3×1/2₌33,333,333円
②直系尊属:100,000,000円×1/3×1/2×1/2₌8,333,333円

⑸直系尊属のみが相続人の場合

対象者 遺留分
直系尊属 1/3(人数按分有り)

 

【具体例】直系尊属(祖父、祖母)のみの場合
100,000,000円×1/3×1/2₌16,666,666円(各々)

⑹配偶者及び兄弟姉妹が相続人の場合

対象者 遺留分
配偶者 1/2
兄弟姉妹 権利なし


【具体例】配偶者及び兄弟姉妹の場合
①配偶者:100,000,000円×1/2₌50,000,000円
②兄弟姉妹:遺留分はありません。

3. 遺留分侵害額請求における価額弁償

⑴時効

遺留分を侵害された遺留分権利者は相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内に遺留分侵害額請求を行わなければ時効によって消滅します。

また相続開始から10年が経過すると、どのような事情があったとしても遺留分侵害額請求を行使することができなくなります。請求できる期間は短いため、早めに遺留分侵害額請求をするか否かについて決断する必要があります。

⑵侵害額請求

遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分に相当する金銭を請求できます。このことは逆に土地・家屋・取引相場のない株式を取得したことによって他の相続人から遺留分侵害額請求をされた場合には、金銭で遺留分侵害額を支払えるように事前に資金を準備する必要があると言えます。

※受遺者と遺留分権利者で別段の同意があった場合のみ現物財産で遺留分侵害額を支払うことは可能ですが、その場合には現物を侵害額相当額で譲渡したものとみなされ、受遺者に譲渡所得税がかかりますのでご注意ください。

4. 遺留分に関する民法の特例

遺留分は遺言や遺産分割協議によって相続財産を取得できなかった相続人の権利を守る制度になっていますが、一定の場合には逆にこの遺留分制度があるため問題が生じてしまうケースもあります。

例えば非上場会社の事業承継の場面が該当します。相続後の経営の安定化を考慮すると、会社の経営の決定権を確保するために必要となる非上場株式の過半数の株式や事業用資産を後継者のみに取得させるべきですが、後継者以外の相続人はこの非上場株式等の価額につき遺留分侵害額請求をすることができます。

請求されてしまうと後継者は原則として遺留分侵害額を金銭で賠償しなければなりません。これでは円滑な事業承継ができないという観点から、遺留分に関する民法の特例が定められました。先代の代表者の推定相続人及び後継者全員が書面による下記の同意をすることでこの特例を適用することができます。

⑴除外合意

後継者が先代の代表者から取得した非上場株式については、遺留分の対象から外すことができます。そのため遺留分が問題となるのは当該非上場株式以外の先代の代表者が所有していた相続財産のみとなり、事業承継に不可欠な非上場株式や事業用資産に係る遺留分侵害額請求を未然に防止することが可能となります。

⑵固定合意

遺留分の算定に際して、生前贈与された非上場株式の価額を合意時点の評価額であらかじめ固定することができます。これをすることで事業承継後の後継者による非上場株式の価値上昇分は遺留分請求の対象外となります。

原則的な遺留分の算定は被相続人が亡くなった時点における評価額で行われます。これでは事業承継後に後継者の貢献によって非上場株式の評価額が上げれば上げるほど、遺留分の算定が相続開始時点の上昇した後の評価額で計算されてしまうため、後継者が遺留分侵害額請求される価額が大きくなってしまうという問題が生じます。固定合意をすることで後継者の経営意欲が阻害されることを防ぐことが可能です。

⑶付随合意

非上場株式以外に贈与した財産も遺留分の対象から除外する合意です。これは上記の除外同意・固定合意をした場合にのみ、付随的に行うことが可能です。

5. まとめ

今回はよく混乱しがちな遺留分について説明致しました。特に遺留分割合は相続人が誰かによって割合が異なるため注意が必要です。相続人の中には兄弟姉妹も遺留分があると勘違いしている方もいるため遺産分割協議の際に問題にならないように、しっかり制度を理解することが重要となります。

弊所が対応した相続案件でも遺言書が見つかり相続人の1人の方があまりにもご自身が取得できる遺産が少ないことでショックを受け、遺留分を請求した事例もあります。円満な相続を行うためにも遺言書を今から作成しようとお考えの方は遺留分もしっかり考慮することをお勧め致します。

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