相続税を納めないといけない方はどんな人⁉ 判定方法を税理士が解説!
ご家族の方が亡くなるとその方が持っていた財産を相続することになります。相続税を税務署へ納めないといけないと心配になって税理士の私にご相談してくださるお客様も多くいらっしゃいますが、意外と申告不要で済む方も多いです。どんな方が相続税を納める必要があるかを説明致しますので、ご一読頂けたら幸いです。
目次
1. 相続税には多額の基礎控除額があります!
相続税は亡くなられた方(以下「被相続人」と呼びます)が所有していた現金、銀行預金、有価証券、土地、家屋などの資産の総額から、被相続人の借入金や未払金などの負債の金額や葬式費用を差し引いた金額(以下「正味の遺産額」と呼びます)が遺産に係る基礎控除額を超える場合に課税されます。
【具体例】正味の遺産額
現金 | 100,000円 |
普通預金 三井住友銀行 新宿支店 | 32,000,000円 |
ゆうちょ銀行 | 10,000,000円 |
上場株式 A社(100株 @12,000円) | 1,200,000円 |
投資信託 MRF(200,000口) | 200,000円 |
土地(ご自宅)東京都新宿区 | 6,000,000円 |
家屋(ご自宅)東京都新宿区 | 4,000,000円 |
家財一式 | 100,000円 |
借入金 三井住友銀行 | -5,000,000円 |
葬式費用 | -1,500,000円 |
正味の遺産額 | 47,100,000円 |
上記の正味の遺産額から基礎控除額を引きますが、その基礎控除額は下記の算式で求めます。
基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば4人家族でお父さんが亡くなられた場合、法定相続人はお母さん・長男・長女の3人です。上記の算式で計算すると基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。
ここまで読んでくださった皆さんはもうお分かりだと思われますが、今回のケースでは正味の遺産額(47,100,000円)が基礎控除額(48,000,000円)を超えないため、相続税はかからないで済み 税務署へ相続税申告書を提出する必要はありません。
2. 相続税の課税件数の割合
日本の場合には、相続税がかからない被相続人の方の割合は91%と言われています。つまり、ほとんどの方は相続税はかからず無税で財産を配偶者や子ども達に残すことが可能です。
3. 相続税がかかる人
基礎控除額を超え、相続税を納める必要がある人はどんな方が多いでしょうか?
⑴多額の銀行預金がある方
銀行預金を多額にお持ちの方は基礎控除額を超える恐れがあります。被相続人の方が利用していた銀行や郵便局に相続開始日時点の残高証明書の発行依頼をしてください。
⑵都市部にお住まいの方
相続財産に含まれる持ち家が都市部にある方は土地の価額が高額になる傾向が高いため、基礎控除額を上回る可能性があります。毎年4~5月頃にお住いの市区町村から届きます固定資産税・都市計画税の納税通知書から土地及び家屋の相続税評価額を試算することは可能です。
財産の種類 | 相続税評価額 |
土地 | 固定資産評価額×1.14 |
家屋 | 固定資産評価額×1.0 |
⑶有価証券をお持ちの方
上場株式や投資信託を多くお持ちの方は基礎控除額を超える恐れがあります。被相続人の方が利用していた証券会社に相続開始日時点の残高証明書の発行依頼をしてください。
また被相続人の方が非上場会社の社長であった場合には、その会社の株式(以下「取引相場のない株式」と呼びます)が相続財産となり多額になるケースがありますのでご注意ください。
申告時には取引相場のない株式の評価額を算定するために、その会社の過去3年分の決算資料や会社所有の土地・家屋を評価する上で必要な固定資産税・都市計画税の納税通知書をご準備頂く必要があります。
⑷生命保険金をかけていた方
被相続人を被保険者として、被相続人が保険料を負担していた保険契約がある場合には、その受け取った保険金は相続税の課税対象になります。保険会社が発行する生命保険金等の支払通知書をご確認ください。
ちなみに生命保険金は多額の非課税限度額があります。以下が算式です。
500万円×法定相続人の数
上記と同じ事例の場合、法定相続人の数は3人であるため、非課税限度額は1,500万円(500万円×3人)となります。生命保険金の額が1,500万円を超えない限り相続財産に計上されないため、試算をする際には非課税限度額も考慮して判定してください。
4. 申告期限
相続税申告の申告期限は、相続の開始を知った日(亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内となっています。その期限が土・日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限になります。
【例】令和5年7/1に亡くなった被相続人の方の申告期限は令和6年5/1までとなっています。
10ヶ月と期間は長いですが、相続税申告は相続人の確定をしたり、相続財産調査を行って被相続人の財産の全体像を把握したり、遺産分割協議を行って誰がどの財産を相続するかを決定したり(相続人が多くいる場合や、相続人間の仲が悪かった場合にはかなりの時間を要してしまいます。)と申告期限までにしなければならない事項が多くあるため、早めに取り掛からないと提出期限まで間に合わなくなってしまいます。
5. 提出先
被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではないのでご注意ください。
調べ方は「税務署 管轄 〇〇県」とインターネットで検索すると、国税庁のホームページで【税務署所在地・案内(〇〇県)】と出ますので、被相続人の亡くなられた日の住所地がどこの税務署の管轄地域に含まれるかで探してみてください。
6. 申告しなければ適用が受けられない特例
下記2つの特例は相続税申告を行う上で適用すると多くの納税額を引き下げることができますが、適用を受けるためには相続税申告を提出することが条件となっていますのでご注意ください。例え納付すべき相続税額が0円となったとしても提出する必要があります。
⑴配偶者の税額軽減制度
配偶者が被相続人から相続する財産のうち、課税価格の合計額×配偶者の法定相続分と1億6,000万円のいずれか多い方の金額までの財産について相続税がかからない制度です。
⑵小規模宅地等の相続税の課税価格の計算特例
小規模宅地等の特例 | 限度面積 | 減額される割合 |
特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
【事例】
被相続人が事業の用に供していた土地(300㎡,相続税評価額:30,000,000円)が特定事業用宅地等に該当した場合
30,000,000円-30,000,000×80%=6,000,000円
7. 不安な方や相続した不動産を売却したい方
いかがでしたでしょうか?この記事に記載した通り、ほとんどの人は相続税の納税義務はありません。しかしもし申告義務があるのに申告しなかった場合には、後日税務署から連絡があり本来納めるべき相続税の他に無申告加算税や利子に該当する延滞税等の罰金的な性質の附帯税が更に課されてしまいます。相続税申告をすべきか不安な方がいましたら相談に乗りますので、税理士事務所スプリングまでお気軽にご連絡ください。資産税に強い税理士があなたを担当致します。
また相続した家屋が空き家になってしまい売却を考えている方は、売却した年の翌年3/15までに所得税の確定申告書を提出する必要があります。こちらの申告書の提出も弊所で対応可能です。また空き家の売却先をさがしている方には弊所が連携を取っている不動産会社や家財処分を行っている業者を紹介することもできます。ご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。